国連の平和維持活動とは何なのでしょうか?そして、それはどのように発展していったのか。ここでは、国連平和維持活動の発展の流れや概念について触れていきます。
平和維持活動とは?
平和維持活動とは、紛争地域の自体の悪化を防ぎ、平和の維持・回復を促進するために国連の権威の下に行われる活動
伝統的PKO
1.派遣国だけでなく、受け入れ国および紛争当事者の同意を前提とし
2.活動は当事者に対する強制的なものでなく、特定国の政策から独立性が強調され、そのため参加者も安保理常任理事国以外の国から形成
3.武器の使用は自衛のためにのみ認められる
PKOの当初の分類
- 軍事監視団の派遣
- 平和維持軍の派遣
注目されるようになったのは、軍事組織を伴う平和維持軍が使用されるようになってから
最初の例
1956年 スエズ紛争の際に総会決議により設置された国連緊急軍
第二の例
1960年 コンゴ動乱の際に派遣されたコンゴ国連軍
コンゴ動乱において自国民保護を理由として介入したベルギー軍の即時撤退、酷な治安の維持、政府軍に対する軍事援助を任務とする
冷戦期
1964年 キプロス国連軍 キプロスに派遣
1973年 第二次国連緊急軍 中東に派遣
1974 国連兵力引き離し監視軍 ゴラン高原に派遣
1978年 レバノン国連暫定軍 レバノンに派遣
伝統的平和維持活動の性格
国連憲章が予定した国連軍とは性格は別
平和に対する脅威、平和の破壊、侵略行為が存在する場合にとられる強制阻止とは別
停戦確保・事態悪化の防止・治安維持のための警察活動
→紛争解決自体が任務ではない
冷戦終結後の展開
国家間の武力紛争の停戦・休戦の確保よりも地域紛争や民族紛争などから生じる事態に対処する。伝統的な平和維持活動とは性格を異にする事例出現。
ナミビア 国連独立移行支援グループ 休戦監視、公正な選挙実施の監視
1992 国連カンボジア暫定機構 停戦監視・警察を含む行政機構の活動監督や自由で公正な選挙の実施を任務に。現地での行政に関わる大規模な文民要員を含む。
伝統的な平和維持活動の内容+内戦解決のために当事者間で達成された包括的合意を実現する紛争後の平和構築にも及ぶ活動
国連憲章第7章に基づいて強制性を備えるものも現れた。ソマリアに派遣された国連ソマリア活動
旧ユーゴに派遣された国連保護軍
→人道的援助の支援などもその目的とした
事態の悪化→あらゆる必要な措置を取ることを要請する決議が採択された
国連保護軍 憲章第7条に基づき強制行動の権限を持つ第二次ソマリア活動が設置
攻撃を行う武装集団の武装解除、武器の禁輸の実施確保などのため武力を用いることが承認された
→強制行動と平和維持活動の区別を曖昧にすることへの危険性が指摘
伝統的な平和維持活動への回帰も主張されるようになった
国連憲章7条を用いての平和維持活動
国連憲章7条を用いての平和維持活動は多い。
・国連シエラレオネ・ミッション、国連コンゴ民主共和国ミッションなど、任務遂行や要員の安全・移動の自由の確保、市民の保護などについて武力行使が認められる
ボスニアヘルツエゴ二ア紛争の終結のために結ばれたデイトン合意
日本の協力 国際連合平和維持活動協力法
・武力紛争再発防止に関する合意の遵守の確保
・武力紛争の終了後に行われる民主的手段による統治組織の設立の援助
そもそも平和維持軍の国連憲章上の根拠とは?
根拠が明示された判例は、国連ある種の経費事件がきっかけ。
1956年に中東に派遣された国連緊急軍 (UNEF) や、60年にコンゴに派遣されたコンゴ国連軍の平和維持活動に要する経費が、総会決議に従い加盟国に割当てられたことがきっかけです。
これに対し、異議を唱え支払いを拒否する国が続出しました。
一方、国連憲章 17条2項には、「この機構の経費は、総会によって割り当てられるところに従って、加盟国が負担する。」と定められています。
問題となった経費が、国連憲章 17条2項に規定されている「この機構の経費」に該当するかどうかが、争いの論点になりました。
結論から言うと、裁判所は62年7月、肯定的回答を行ないました。
裁判所は、判示にあたって、以下の二つの論点を示します。
●17条2項の文言は憲章の全体構造と総会、安保理に与えられた機能に照らし解釈する
●ONUC(国際連合コンゴ活動)とUNEF(国際連合緊急軍(United Nations Emergency Force,UNEF))の活動が国連の主要目的である国際の平和と安全の維持に合致することは、継続的に国連の諸機関によって認められてきたことによって示されている
結果、当該支出は「この機構の経費」にあたると判示したのです。
ポスト冷戦期における国連安保理の展開
冷戦後、国連安保理はどのような展開を見せたのか、探っていきましょう。
スマートサンクションとは?
国連安保理による経済制裁など非軍事的制裁の容認事例は増えてきます。
しかし、これらの制裁は、国全体、国の特定産業に関わるすべての人々に影響を与えます。
たとえば、ある特定の政策決定者の決定により、他国は関税を引き上げたり、輸出入の禁止を行いますが、それにより影響を受けるのは、当該国の関連産業に関わる国民です。
ある意味理不尽と言えます。安保理は、より影響の少なく、個々の事案目的にきめ細かく対応する仕組みを考えます。それが、スマート・サンクションです。
●ポイント
・政府と国民とを区別しない措置は、制裁対象国の国民の生活に深刻な影響を及ぼすことがある
・国民の国連や制裁実施国に対する反感を高め、制裁対象国政府への支持を高める可能性もある。
・国際の平和と安全を脅かす行為を助長するリスクもある。
国家全体を対象とするのではなく、政府代表者や高官など責任を有する個人に対象を絞り、有責者ではない人々への悪影響を最小限に押さえようとする制裁形態を指します。
…制裁の対象の拡大、精緻化、規制対象分野の拡大
GATTの1条の最恵国待遇や数量制限の一般的制限に抵触する覚えがある。しかし、例外規則を定めており、国連安保理にもとづく経済制裁によるものである限り、1条や11条と抵触しても例がい的に許容される。
国連憲章7条で禁止されている武力の禁止や武力による威嚇により、武力不行使原則、不干渉義務に照らして違反とする見解もあったが、なくなっていった。
→影響力のある人物やテロリストへ対象変化
安保理の決議について直ちに国内法的効力を与えるものではなく、 加盟国の法システムによっては、 実施のための国内法を整備することが必要となる場合もある